創業の日よりすでに三世紀を超え、今回、あらためて社史編纂に当るには多くの困難があったが、ここに『小津三百三十年のあゆみ』上梓の運びに至ったことは、
大いなる喜びである。同時に、及ばざることの多きをおそれる気持ちが交錯するもである。幸いにご寛容を賜わり、ご清鑑に供し得られればと願う次第である。
社史編纂を発念されたのは故奥山賢蔵であった。三百年史編纂を指示され、推進に力を注がれたが、時熟さず、刊行に至らないまま歳月が流れた。
今回、創業三百三十年を迎えるに当り、真っ先に思い立ったのは奥山先輩の意思を継ぎ、社史刊行を実現することであった。社内資料の大半は収集されていたが、
されに視野を広げ、社の内外から小津の歩みをとらえ、”読まれる社史”を目ざして編纂することとし、役員のなかから実施責任者を選び、凸版印刷株式会社年史センターの
協力を求めて、実現を図ることとしたものである。
編纂はまさしく「温故而知新」であった。江戸時代の記録や研究に資料を求めて、小津の足跡や紙商の姿を探り、あるいは松坂の地に小津清左衛門家の事蹟を訪ねたのも、
よりひろく史実に即するという編纂方針から出たものである。この『小津三百三十年のあゆみ』はその多くを創業より明治維新に至る時代、並びに明治大正時代の叙述に当て、
現代については概要を述べるにとどめた。小津グループの今日あるのは、諸先輩の精進のたまものにようるとの念からである。
編纂の実務遂行においては凸版印刷株N史センター香川潮部長、製作担当の嶋田寛幸氏、調査執筆担当の武田葛史らのご協力に負うところが多い。絵巻は駒宮録郎画伯の作で、
業界初の絵で見る紙の生活史である。また、東京都公文書館片倉比佐子氏を始め、松阪市編纂室田中桂一氏、小津家ゆかりの松阪養泉寺住職釜田隆文師からも貴重なご助言をいただき、
文献では『江戸商業と伊勢店』『手漉紙氏の研究』等を資料として使わせていただいた。その他、多くの方々のご助力を得て本書はなったのであり、心から感謝申し上げる次第である。
昭和五十八年十月
小津三百三十年史編纂委員会